ブローカレス理論(SIONetが目指した世界) ブローカレスモデル、御用聞き社会
誰にも必要以上に管理されない、自由で、平等・対等で、自律的なネットワーク社会を構築したい。これが1998年にブローカレスモデルを提唱したそもそもの動機でした。
ブローカレスモデルは、理念・概念であり、これが目指す世界は単純明快です。具体的には、以下のような世界を構築することを狙いとしています。
ブローカレス
従来、ブローカ(仲介者、運営者、管理者、実装的には中央集権的な管理部など)が担っていた役割を、それぞれのエンティティが ボランティアとして分担することにより、特定の仲介者、運営者、管理者の存在を前提としなくても、さまざまなネットワークサービスを 構築、運営することができます。これは、ブローカを介さずに、直接、エンドユーザ同士、もしくは、グループ同士でコミュニケーション (情報のやり取り)が可能な新たなビジネスモデルです。
自己組織化
ボランティアとして運営に参加している任意のエンティティが、障害や退去などの様々な理由により、「場」の運営から脱退しても、 ネットワークサービス全体に影響を与えないように、残されたエンティティが自律的に自己組織化することによりサービスを継続します。
自律性(個の尊重)
エンティティグループへの参加・退去は、各エンティティの自律性に委ねられます。つまり、エンティティの自律性、自由度、 プライバシーを最大限尊重し、エンティティグループへの参加、退去を強制しません。これは、まるで個々人が自分の意思で ポランティア活動に参加するように、個々のエンティティが自律的にブローカの役割を分担します。
そして、このブローカレスモデルの実現技術として考案したものが、意味情報ネットワークSIONet(シオネット)なのです。 当時は、P2Pと呼ばれる用語も概念も存在しませんでした。ブローカレスモデルは、P2Pに先駆けて提唱された「新たなビジネスモデル」と 言えるでしょう。
なお、「今話題のP2P(ブローカレスモデル)」と「2者間のピアが直接通信を行うインタラクションモデルとして古くから知られている P2Pインタラクション(E2E)」は、異なる概念であることに注意ください。「P2Pインターラクション(E2E)」は「P2P(ブローカレスモデル)」の単なる一つの実現技術に過ぎません。 残念ながら、後者の「P2Pインターラクション(E2E)」を「P2P(ブローカレスモデル)」と定義している 文献が多数見受けられます。このような誤った定義や解釈が「P2P(ブローカレスモデル)」は古典的であるとの誤解を与えています。最近では、ユビキタスネットワーク、グリッドコンピューティング、センサーネットワークなどにおいて、 P2Pの本質である「ブローカレス」の概念が広く活用されています。